@phdthesis{oai:kitami-it.repo.nii.ac.jp:00009076, author = {平野, 満大}, month = {Mar}, note = {近年では、金属またはセラミックス材料製の人工歯根や人工股関節(インプラント)を顎骨や大腿骨に埋入し、老化や疾患によって失われた歯や股関節の機能を回復させる外科治療が行われている。本治療では、①埋入したインプラントと骨が早期に固着すること、②埋入手術時に体内への細菌混入を防止することが治療の成否を分ける。しかし、インプラントならびにメスなど外科手術器具として応用されている金属またはセラミックス材料は、「新生骨の形成を促す能力、即ち骨形成能」や「細菌を不活性化する能力、即ち抗菌性」が乏しい。このため、「インプラントと骨の固着不全」や「術後感染症」を誘発することが懸念され、医療現場では課題となっている。  本研究では、外科治療におけるリスク軽減の観点から、更なる治療成功率向上を目的に、金属およびセラミックス材料表面の骨形成能向上、および抗菌性付与を可能とする表面改質法の研究を行った。本研究を通して以下の成果を得ることができた。  1)インプラント材料として応用が期待される金属ZrおよびZrO2に対しスラリー埋没加熱処理を適用することで、骨形成能が向上することを明らかにした。本処理は、リン酸カルシウム粉末と蒸留水で調製したスラリー状処理剤に基板を埋め込み、そのまま熱処理を行う表面改質法である。各材料表面にハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を固定化でき、また処理表面で動物細胞を培養すると、末処理材料と比較して骨の基となる石灰化物の形成が促進されることが示された。一方で、ZrO2表面へのHAp粒子固定化にはZrと比較して処理温度を約500℃以上上昇させる必要があった。本処理では、処理剤中のCaやPが熱処理中に基板へ拡散されることでHApの固定化が達成される。一般的にセラミックス材料中での元素の拡散係数は金属材料と比較して小さいため、ZrO2の場合ではより高い熱処理温度が必要であることが示唆された。  2)インプラント材料として既に応用されている金属Tiに対して、プラズマ処理を施すことで親水性を付与でき、さらにリン酸緩衝液(PBS)中に保存することで親水性を保持できることを明らかにした。材料表面の親水性は、接着した細胞の活性に影響し、骨形成能にも関与することが報告されている。Ar/O2混合ガスプラズマ処理を行うと、処理直後のTi表面は親水性を示したが、その後大気中また蒸留水中で保管すると時間経過に伴いその特性は減衰した。一方で、PBS中で保存すると、保存後でも処理直後と同等の親水性が確認された。最表面の化学組成を分析するとPBS中で保存したTi表面では、吸着した炭化水素量がプラズマ処理直後と差がなく、またPBS中に含まれるNa+とCl-が検出された。故に、これらが親水性保持の要因であることが示唆された。  3)外科手術器具として応用されているステンレス鋼表面に対し、プラズマ処理により表面形状を制御することで抗菌性を付与できることを明らかにした。Arプラズマによりステンレス鋼表面を処理することで、ナノレベルの柱状物(ナノピラー)を形成でき、併せてプラズマ発生条件を変化させることでナノピラーの形状を制御できることを示した。また、処理表面で細菌を培養すると、未処理材料と比較して生細菌数が減少した。さらに、処理表面に付着した細菌の形態観察を行ったところ、細苗はナノピラーによって貫かれていることが確認された。以上の結果から、処理表面での生細菌数の減少は、プラズマ処理により形成されたナノピラーが細菌に対して物理的な損傷を与えたことが要因であると示唆された。}, school = {北見工業大学}, title = {医療機器用無機材料の生体機能向上を目的とする表面改質法に関する研究}, year = {2021} }