2024-03-29T12:20:08Z
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oai:kitami-it.repo.nii.ac.jp:00009078
2022-12-13T02:24:00Z
2:6
衛星リモートセンシングデータを用いた南極海の海氷モニタリングおよび海氷変動に関する研究
星野, 聖太
9000410908646
ホシノ, セイタ
HOSHINO, Seita
北見工業大学
博士(工学)
海氷は,地球大気との熱交換や海洋の熱塩循環に重要な役割を果たす.1979 年以降,両極における海氷の空間的な広がりは,衛星マイクロ波放射計によって明らかにされつつある.面積とは対象的に,南極海における海氷の種類および厚さの時空間的分布はほとんど明らかにされていない.南極大陸の沿岸部に形成される定着氷や沖合部に形成される流氷の存在は,南極氷床の変動の将来予測やそれに伴う海面上昇の変動を明らかにするために重要である.また,面積と厚さを組み合わせた海氷量に関する情報は,南極における海氷システムの熱収支,南洋への淡水および塩水フラックスの定量化の両方に対して非常に重要である.
このような状況で,日本南極観測隊を支援するために日本を出港した砕氷艦しらせ(二代目)は,2011年と2012年の二期連続して昭和基地への接岸を断念した.これは,30年ぶりの出来事であった.海氷の種類や厚さ(海氷上の積雪を含む)の分布をあらかじめ知ることができれば,2013 年,2014 年の報告にもあったように約 6 m の海氷を避け,最適な航路の選定が容易になる.これにより今後昭和基地沖への安定した人員,物資の輸送を行う事ができるのではないかと考えられる.
本研究では,北極海において近年確立しつつある海氷分類手法と海氷厚推定手法を応用し,南極海のリュツォ・ホルム湾において海氷をモニタリングおよびその変動を明らかにすることを目的とした.衛星散乱計ASCAT(Advanced Scatterotmer)と衛星搭載マイクロ波放射計AMSR2(Advanced Microwave Scanning Radiometer-2)を用いて海氷分類アルゴリズムを開発した.開発した分類手法を検証するために現場目視観測データと比較した.融解期や解像度の違いといった特殊な状況を除けば,全体的な精度(Overall accuracy)は71%と高精度で海氷を分類できることが示された.当該分類アルゴリズムでは氷種類の分類に加え,定量的な海氷の流出も明らかにすることが可能である.加えて,大陸周辺に存在する棚氷,沿岸氷床,内陸氷床の分類も可能であり,今後の氷床変動モニタリングに寄与すると考えられる.
さらに,北極海において干渉型合成開口レーダ高度計SIRAL(Synthetic Aperture Interferometric Radar Altimeter)により計測されたフリーボード(海面上の海氷の高さ)を用いた海氷厚推定手法を改良し,現場データとの比較によりその妥当性を検証した.改良型のアルゴリズムで算出した海氷厚と,係留ブイ及び航空機搭載型高度計による海氷厚との平均二乗誤差(RMSE)はそれぞれ0.47 mと0.97 mであった.既往のアルゴリズムとのRMSEの差は0.1 m以下であり,同程度の精度で推定可能である結果を示した.加えて,フリーボードの推定では,従来のアルゴリズムよりも推定精度が向上しており,優位であることが示された.
北極海を対象として開発した推定手法と海氷分類アルゴリズムを組み合わせることで,南極海のリュツォ・ホルム湾における海氷厚を試験的に算出した.算出した海氷厚値は,観測日の差が2週間以内,及び観測範囲が2.25 km以内の現場データと比較した.現場観測との比較ではRMSEが1.22 mと誤差は大きいが,優位な相関関係であることが示された.精度が低い要因として次の理由が考えられる.海氷が流出し急速に回復した地点や,海氷が重なり合い急に厚くなる乱氷帯のような局所的に現れる領域では,衛星データと現場データの解像度の違いにより誤差が大きくなる.また,南極海での海氷厚推定式は,北極海のものと同式を使用しているため,南極海にも適応可能な式を検討することが今後の課題である.
開発したアルゴリズムを用いて東南極リュツォ・ホルム湾における海氷の厚さの変動および海氷のみならず,陸起源氷と陸氷を含めた氷種類の変動を調べた.本研究で開発した氷分類アルゴリズムは,特定の地域の分布と氷の種類の量的変化として氷の崩壊イベントを検出できることが証明された.また,厚さ分布も海氷の流出とともに,厚い海氷から薄い海氷に置き換わっていることが定量的に示された.
この研究では,南極海において未だ確立していない海氷分類および海氷厚推定アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムにより定着氷の流出等の海氷変動を明らかにするための有効なツールとなると考えられる.
doctoral thesis
2021-03
2021-03-19
application/pdf
10106乙第38号
https://kitami-it.repo.nii.ac.jp/record/9078/files/otsu38_Hoshino.pdf
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